メタバースという言葉は、
Meta(超越した)とUniverse(宇宙)という言葉を合わせた造語です。
インターネット上に存在する3Dのデジタル空間の事を指します。
宇宙の神秘という言葉があるように、リアル宇宙にはまだ解明されていない神の秘密に溢れています。同様に人間が創り出した3Dデジタルのバーチャル宇宙であるメタバースもまだ定義としても曖昧であり、昨今の予測不可能なテクノロジーの進化を考えると未知の領域と言えます。
もう一つの宇宙”メタバース”について、分類、構造、他の概念との比較をしながら本質に迫っていきたい。
■メタバースの分類
メタバースの定義は一般的にインターネット上の3Dデジタル仮想空間と言われてますが、話す人の目的、用途によって大きく変わってきます。
VRは仮想現実、ARは拡張現実、MRはVRとARがまざったもの、それらの技術を総称してXRといいます。XRはハードウェアのディバイス技術の分類ですが、今回はソフトウェアコンテンツにおけるメタバースの分類です。
メタバースプラットフォームとして①生活、②デジタル空間、③経済という3つの分類に仲間分けすることができます。
まず、clusterやVrchatは①の生活の赤に分類できます。①の生活のグループは仮想空間で過ごす事が主な目的です。
フレンドとおしゃべりをしたりゲームで遊んだり、VR睡眠したり現実とは別の3Dの没入感のあるもう一つの世界です。
ここは現実とは別に匿名で没入感のある体験を求めている為、VRヘッドセットつけてプレイする方が多いです。
次に、②の黄色いデジタル空間ですが、これは3DCG技術をベースとした空間の事をさします。そこに現実世界と同じような世界をつくるデジタルツインや、ミラーワールドといった技術も注目されています。①のグループと②のグループが交わるAの分類はMMOゲームです。オンラインで同時接続し不特定多数の人がログインして対戦したり、一緒にクエストのクリアを楽しむことができます。
最後に③の経済ですが、従来のインターネットが2DをベースとしたWebサイトやオンラインの経済圏がそのまま3Dの空間となったものです。
ECサイトや広告が3Dになることで生まれる経済圏です。このグループには、web3といわれるNFTや仮想通貨を中心としたメタバースを考えている人もいたりします。
③と②がかさなっている部分がBの部分で企業などが工場のシミュレーションとして
3D空間を活用したり、ZOOMやskypeのようなコミニケーションツールとして身内同士のクローズドなミーティングをするときにある会議など打合せに特化したメタバース空間です。
そして、①と③のグループがかさなっているのが、クリエイターエコノミーです。
Clusterでのアクセサリー機能で自作したものを売り買いできる経済圏はまさにここに分類されます。縦軸がうえにいくと実写に近い、下に行くとアニメ風です。横軸は没入感があるか現実重視型であるかという指標です。
メタバースの全体像を把握して遊ぶことによってより自分自身の目的や用途にあった体験をすることができます。
■メタバースの構造
メタバースの構成というテーマでより核心的な構成要素についてみていきましょう。例えるとメタバースの分類がカレーの種類でメタバースの構造はカレーの材料です。
まずメタバースを構成する要素を6つのレイヤー(層)で考えます。
上はより一般層が接触する部分で下の層にいくほどよりメタバースを構成するコアな要素となっています。
メタバースを構成する要素の重要度が高いものがより下のレイヤーになっています。
まず重要度が高い下からが分かり安いので一番下のAのインフラからみていきましょう。
インフラはおもにサーバーやクラウド環境上に構築され、5G等と言われているような通信ネットワークの大元です。
BのVR,AR/PC,スマホはVRゴーグルやARグラスなどメタバース空間に接続するインターフェースの技術を指します。3D空間を表示するデバイスの技術でPCやスマホ等も含みます。最低限この2つは必要不可欠な要素でしょう。
Cの3Dソフトウェアというのは、実際に空間を作りだすソフトウェアです。
具体的にはUnityやUnreal Engineなどの技術がここにあたります。
このあたりのレイヤーまではより開発者側のコアな技術要素になってきます。
Dのクリエイターエコノミーは個人クリエイターが商品・サービスを提供し、収益を上げるデジタル市場です。Clusterのアバターマーケットやアクセサリー機能などで経済圏が生まれているのもこの範囲です。
Eの生活というのは、前回の記事でもお伝えしたclusterやVRchatのような普段おしゃべりしたりVRSNSといった日常を過ごすことを目的とした要素です。
Fの体験はフォートナイト、どうぶつの森などの複数のプレイヤーが同時に参加できるオンラインMMOゲームやホライゾンワークルームなどで業務で開けた空間でフレキシブルにコミュニケーションを取ったりショッピングなど一時的にツールとして利用する要素です。
以上がメタバースを構成する6つの要素です。
■メタバースとVR
メタバースとVRついて説明していきます。結論から言うとメタバースは空間そのものの概念を指しており、VRはその空間に入る(接続する)為のインターフェースです。VRゴーグルやARグラスなど接続する為のディバイスや技術なので、インタフェース無しではメタバースに入ることはできません。
メタバースに入る為のVR技術は大きく3つに分かれています。
一つ目は、VR(Virtual Reality)です。VRゴーグルを装着する事で、視界の360°が覆われ、3Dのデジタル空間に没入する感覚が得られる技術の事です。日本語ではよくVirtual Realityを仮想現実と訳しますが、本来、仮想というニュアンスはVirtual Realityにはありません。仮想の意味は、事実でないことを仮にそう考えることですが、
「Virtual Reality」は「見かけや形は実物とは違うが、効果としては実質的に現実に等しいもの」という意味なのです。
「仮想現実」より「人工現実感」の方が適切であると言えるでしょう。
ですので、日本人は、VRというと、現実から離れて事実ではない架空の別世界に没入する事を連想しがちですが、本来は、人工的により現実に限りなく近い空間を作り出す技術という事です。
2つ目は、AR(Augmented Reality)です。拡張現実ともいわれており、現実世界にバーチャルな視覚情報を加え、現実を仮想的に拡張する技術のことです。代表的な例としては、ポケモンGOなどがわかりやすいと思います。
3つ目は MR(Mixed Reality)です。「複合現実」と訳され、現実世界と仮想現実を組み合わせる技術です。
これは主に建築現場で完成した3D図面を表示させたり、医療現場のシミュレーション研修などで期待されております。
このような3つの技術を総称してXR(Cross Reality)といいます。
日本人はVRを仮想現実と訳し、実際に別世界に入り込むというイメージがすでに強くあり、メタバースも似たような概念であるため、VRとメタバースはよく混同されがちです。ただ言葉のニュアンスや違いも上記の通り文化背景や国によって変わってきたりします。ですので正確に言葉の意味を定義することも時には大事ですが、概念における言葉の定義は簡単ではありません。例えば、同じ白という言葉にも私たちの周りを見渡すといろんな白があります。紙の白や雲の白、光の白、全く同じ概念を言語のみで可視化するのは難しいので、言葉や図だけでは完璧な定義をすることは不可能です。だからメタバースの定義に正解はありません。一番正しい定義は、専門家が定義するのではなく、あなたが創造するもう一つのデジタル世界そのものがメタバースの定義なのかもしれません。
■メタバースとゲーム
“メタバースは死んだ!”
これは世界的なゲーム、フォートナイトで知られるエピックゲームズの社長ティムスウィニーさんが2023年5月10にSNSで投稿した言葉です。
ですが、この投稿には続きがあります。
“フォートナイト、マインクラフト、ロブロックス、PUBGモバイル、サンドボックス、VRchatの月間アクティブユーザー6億人が、リアルタイムに3Dで一緒にその死を悼むことができるよう、オンライン葬儀を企画しましょう”
これは、もし死んだというのならなぜ世界の約10%となる6億人という多くの人口が生存しているのに、死んだと言えるのだろうか?
というアンチメタバース勢に対する皮肉でした。
フォートナイトにて先日リリースされたUEFNというサービスは外部編集ソフトのアンリアルエンジンを使用しゲーム上に自作ゲームをアップロードできる画期的かつ革命的なサービスで世界を驚愕させました。
これは、ゲームのメタバース化という序章であることは間違いないと言えるでしょう。
ゲーム要素の観点からみたメタバースについて考えればこれまでカオスだったメタバースの概念がよりイメージしやすくなるかもしれません。
メタバースという言葉が説明される際によくMeta社の社名変更が取り上げられますが、それよりも以前からエピックゲームズやロブロックスのゲーム産業界隈で投資家達を納得させる為、ビジネス用語としてメタバースという言葉は使われていました。
もちろんメタバースという言葉を社名変更とともに世界中に周知させたMeta社の貢献は図りしれないです。
では、それらの概念は、全く別物の概念だったのでしょうか。
そうではなくお互いに影響し合っていたと考えています。
世界的に有名になった日本企業の任天堂はもともとは京都で花札を売っていた企業でした。
それは平安時代から続く百人一首など京都という歴史的な地域で短歌や和歌などがかるたとしての娯楽がいにしえのゲームとして、日本の伝統文化が影響していったと考えられます。メタバースを題材にした映画「サマーウォーズ」でも細田守監督が任天堂リスペクトとして花札を作中で取り上げたほどです。
そのように伝統文化や娯楽などの人々の習慣は時代とともに文化的に遺伝し合ってよい影響を与えづづけてきたことは事実です。
それでは、今回は一部でバズワードとも言われているメタバースという言葉は、従来のボードゲームや、ビデオゲーム、コンピューターゲームなどから派生した文化の産物と仮定し整理していきましょう。
ゲーム要素とメタバース要素の共通的な要素をまとめていくと図のような5つの項目が考えられます。
①同接人数
②役割分担
③広大空間
④自主創作
⑤目標設定
まず①の同説人数は、MMO(Massively Multiplayer Online)として参加する人数が何人いるかで
ゲーム性も変わってきますしメタバースにおいても描画処理の観点から何人接続可能なのかは重要な要素になってきます。
次に②の役割分担は、RPG(Role-Playing Game)とも言い換えられ、プレイヤーの演じるキャラクターの成長を特徴とする要素です。
これも有名タイトルゲームには欠かせない要素となってきますし、メタバースにおいても現実世界とは別のアバターを使用して別人として第二の人生の送るようなセカンドライフなどが代表的な例になってきます。
この①と②が組み合わさったジャンルとしてMMORPGという概念の元祖はウルティマオンラインという代表作が有名でその歴史は今のメタバース概念に大きく影響していることは間違いないでしょう。
③は広大空間ですが、これはゼルダの伝説などの開かれたマップまさにオープンワールドという概念です。
どこに行くかを自由に意思決定しゲームを攻略していく要素は、まさにメタバースにおけるワールド巡りや好きなフレンドのいるワールドに行ったり、気分によって行くワールドを変えることができるという要素です。
これはワールド内に広告を掲載するなど現実世界においても人がよく目にするところや人が集まる場所に宣伝できるなどの要素も含まれます。④の自主創作という概念ですが、冒頭にもフォートナイトのUEFNを取り上げましたが、まさにゲームにおいての自主選択によるカスタマイズ性やオリジナリティを出す要素が追加されるケースが多くなってきました。
ポケモンの主人公の顔をアバターのようにカスタマイズできたり、ゲーム内でアイテムやアクセサリーなどを自作できるようなゲームが増えてきているように感じます。
これはまさにゲーム要素が創作コンテンツをより多く取り入れるようになりゲームがメタバース化してきつつあるともいえるでしょう。
これはメタバースの分野ではクリエイターエコノミーなど言葉があるように自作した作品を売ったり買ったりする経済圏も含まれます。
最後に⑤の目標設定ですが、ゲームクリア条件のことです。ゲームの本質は適切な難易度をクリアすることによる達成感を得る事です。
ポケモンでいうと収集、マリオカートでいう競争、モンハンでいう狩猟というゲームはそれぞれゴールが定められており、それらの条件を満たしたときに達成感を感じるようデザインされています。
ただメタバースは、与えられた目標ではなく自身で目標を設定しアバター創作やイベント開催、フレンドとの交流などゲームを進めていくにおいてこれに挑戦してみたいや、
フレンドから誘発されて何かを始めたりするなど無意識のうちに目標を設定していると考えられます。そうゆう意味では、役割分担とも密接な関係になっていると言えます。
持続してプレイを楽しめるように自身で設計しているという違いがありますが、ゲームにおいてもメタバースにおいても重要な要素となっています。
この目標設定をクリアしていく過程において、予測不可能性というのがあります。
例えば、ガチャなど(ボードゲームではサイコロやダイス)メタバースでは様々なユーザーと出会える出会いガチャや、
予期しなかったフレンドとの会話が自然発生し有力な情報が得られたり、フレンドとのコミュニケーションを通して気持ちが整理されたり、退屈な時間を楽しく過ごすことができた場合には、一種の達成感を得られることが可能になります。
■メタバースとアバター
アバターは、インターネット上で自分の分身として使われるキャラクターのことを指します。アバター(avatar)の語源は、サンスクリット語の「アヴァターラ(avataara)」です。アヴァターラは、インドの神話などにおいて「(神や仏の)化身」を指す単語です。1979年発表のRPG「Avatar」において、初めてコンピューターの世界で「アバター」の語が使われたといわれています。
もともとは神聖なものとして使われていた言葉が広く使われるようになりました。アバターの要素を8つの要素に纏めてみました。
まずは越境です。リアルの年齢や性別、容姿、国籍、人種を超越できるという点です。これは普段現実では関われない人と話しをする事でより視野が広がったり、新たな知見を得られるチャンスにつながります。
そして、アイコンとしての役割があります。SNSのアイコンと同じで自分を示す目印です。これはインターネットにおけるアカウントしての機能というのが趣旨です。
なりたい自分、違う自分は現実でコンプレックスを抱えたりする人にとって理想と現実のギャップが解消される一つの手段になりうる事でしょう。リアルから逸脱しようとするときに自分自身の限界や不可能性に気付く事により成長しうる事もあります。
自己表現は、アバターを通して自分の好きなことや自分自身のアイデンティティを表現したりメッセージ性のある主張をすることが可能です。
分身、身代わりは、リアルは本を読んでいてもアバターはBarでみんなでおしゃべりしたり、同時に別の言動をすることです。例えば、息苦しい満員電車の中にいてもアバターは落ち着いたカフェでお茶しているという事も可能です。ほかのユーザーと同じ空間をリアルタイムで体験などを共有できる点もアバターという自分自身の分身としての認識があるからです。
匿名性という事で名前を明かさずに様々な活動を行う事ができます。肩書やポジションにとらわれないことから高いプライドや周りの目などを気にする事なく謙虚になり新しい学びにつながる事もあります。
ユニフォームは、メタバース空間上で同じアクセサリーやTシャツなどを身にまとう事で同じコミュニティに属しているという証しを示しやすくなりチームとしての一体感を生みやすくなるでしょう。これは文化祭のクラスTシャツのような概念に近いですね。
最後に新しい社会はアバターが変わることによって自分自身だけではなくそこにかかわる環境の変化にも気づくことでしょう。リアルなら絶対に行かなそうなワールドや出会いがあなたとかかわろうとする場所や人、そして社会が新しくなります!
そして、私たちはリアルで自己紹介するときに学生だとか会社員だとか何か団体に所属していることなどを明示して関係性によって紹介することがよくあります。ですが、メタバースではリアルの関係している団体や組織を公表できないことが多くあります。その時にメタバース空間における新しい居場所としての関係性を1から構築していく必要があります。そうする過程で自分自身を客観的に見つめなおしアイデンティティの本質を突き詰めるよい機会になり自己分析の場としても最適です。
その他、医療、介護、カウンセリングなどリアルではなかなか話しづらいことも匿名性や容姿を超越しているがゆえに心を開く事が可能になったり、身体に障害を抱える方には精神的な自由を感じる事ができる事で気持ちも明るくなりリアルに良い影響を与えるなど素晴らしい可能性を秘めています。アバターにはそんな様々な社会課題を解決しうる画期的なツールになり得ます。アバターというツールをどう活用するかというそのものが自己表現に他ならないからです。このほかにもさまざまな要素があるでしょう。
■最先端のメタバース~resonite~
2023年10月7日に「Steam」にてアプリケーションが無料リリースされたばかりの新たなVRSNS resoniteについてです。これまで様々なメタバースプラットフォームを解説してきましたが、renoniteはかなり自由度が高くまさに最先端のメタバースといえるその理由をまとめました。まず、resoniteを知るには、「NeosVR」が大きく関係しております。NeosVRはチェコのSolirax社が開発したソーシャルVRプラットフォームですが、「NeosVR」社内では2つの対立が原因で2年間の間アプデがされておりませんでした。今回のresoniteは2つの対立した片方が独自に作り上げたメタバースプラットフォームです。なので、UIやゲームエンジン(FrooxEngine)が同じである為、NeosVRと似ています。既存のアプリという概念を超越した仮想PCです大きな特徴としては、極めて多機能と圧倒的な自由度の高さにあります。そこで具体的な主な機能を下記の通り列挙してみました。
・外部コンテンツ連携
・独自プログラミング言語
・日本語対応
・高解像度のグラフィック
・独自エンジンにて開発
・アイ・フェイシャルトラッキング両対応
・接続時アバターのインポート
・接続時ワールド編集可能
・飛行可能
・アイテムの保存
・動画・画像の共有保存
これだけでなくもっとたくさんの事が出来ますし無限の可能性の秘めております。まさに、UGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)と呼ばれる、自由度の高いプラットフォームはユーザーの創意工夫次第でいくらでも進化し続けるプラットフォームともいう事ができます。メタバースを構成する重要な要素としておいてはこのUGCが要になってきております。